茅葺き屋根の古民家を背に、秋の冷たい空気を切り裂くように白い湯気が立ち昇っていきます。
庭先に広げられたブルーシートでは人間たちがささやかな宴を開く中、手前の特等席では、もうひとつの本格的な芋煮会が静かに進行していました。
ブロックを無造作に組んだだけの即席の竈(かまど)からは、薪が赤々と燃えて爆ぜる乾いた音と、醤油と根菜が入り混じった濃厚な出汁の香りが漂ってきます。

煮え立つ鉄鍋の前に陣取るのは、青いチェックのバンダナを首に巻いた大柄なハチワレ猫。
器用に前足を使い、長い柄の木製お玉をしっかりと握り込んでいます。
灰汁の浮き具合や里芋の煮え加減を見極めるその鋭い眼差しは、長年この集まりを取り仕切ってきた熟練の鍋奉行そのものです。
彼の両脇には、赤いバンダナの茶トラと、ピンクのバンダナを巻いたキジトラが鎮座し、無言のまま鍋の仕上がりを待機しています。
大人たちの足元にすっぽりと収まる三匹の子猫たちも、漂う香りに誘われて火のそばから離れようとしません。
誰一人として鳴き声を発することなく、ただじっと目の前の熱源と具材の調和に集中する、彼らだけの厳格な作法。
人間と猫。種族は違えど、ひとつの庭を共有し、それぞれの流儀で同じ秋の恵みを分かち合う。
火の温もりと湯気の匂いが、日常と非日常の境界線を優しく溶かしていく昼下がりの情景です。
