リビングの隅、使い込まれた木の柱の陰が、今の彼にとっての唯一の安全圏でした。
ラグの上では、自分と同じくらいの大きさの毛玉たちが、カサカサと音を立てるおもちゃを追いかけて熱中しています。
その賑やかな空気から数センチ離れたフローリングの上で、キジトラの子猫は静かに腰を下ろしていました。

白い靴下を履いたような前足を、一度だけフローリングからラグの境界線へと伸ばします。
けれど、仲間の一匹がこちらを向いた瞬間、その足はぴょこんと元の場所へ引っ込みました。
心の中の勇気ゲージは、まだ満タンには届きません。
太い柱に寄り添い、じっと機をうかがう時間が続きます。

やがて、一番の好奇心が恐れを上回る瞬間が訪れました。
「えい」と声が漏れそうなほど、確かな意志を持って右足が踏み出されます。
フローリングの冷たさから、毛足の長いラグの柔らかな感触へ。
境界線を越えた子猫は、低い姿勢のまま、ゆっくりと、けれど確実に仲間たちの中心へと距離を縮めていきました。

輪の入り口にたどり着いたとき、彼は小さな口を精一杯に開けて挨拶をしました。
突然の訪問者に、周囲の子猫たちも一瞬だけ動きを止めます。
沈黙が流れたのは、ほんの数秒のこと。
一匹が彼の足元におもちゃを転がすと、見えない壁は音を立てて崩れ去りました。

それからは、ただ夢中で体を動かす時間でした。
おもちゃの紐を追いかけ、重なり合い、転がり回る。
猫見知りをしていたことなど、もう誰も覚えていません。
彼は顔を上げ、眩しいほどの表情を見せて仲間たちとじゃれ合います。
喉を鳴らす音、肉球がラグを叩く音、そして小さな吐息。
すべての音が混ざり合い、リビングの真ん中に喜びの渦が生まれていました。

楽しい遊びの時間が過ぎると、窓から差し込む光が少しだけオレンジ色に染まり始めました。
誰からともなく動きが止まり、重なり合うようにして目を閉じます。
つい先ほどまで柱の陰にいたあの子は、今では仲間たちのど真ん中で深い眠りの中にいました。
右側からも左側からも、きょうだいのような温もりが伝わってきます。
お互いの鼓動が重なり、規則正しい寝息が重なる。
柱の陰にいた臆病な自分に別れを告げ、仲間という確かな体温を手に入れた、ある秋の日の午後の物語です。
