辞書の谷間にすっぽりと収まった子猫は、ページの密林を前にしてしばし固まっていた。
文字の波に揉まれながら、彼の好奇心は静かに燃え始める。
「読むって、噛むことじゃないんだにゃ…」と気づいたのは、鼻先で単語をなぞっていた時。
目を閉じて、言葉の匂いを嗅ぎ分けるようにしているうちに、彼の中で何かが動き出す。
「この“哲学”ってやつ、うまそうかも…」とつぶやきながら、ページをめくる仕草はどこかぎこちない。
でもその不器用さが、彼の学びの始まりを物語っていた。
本の重みはまだ彼には大きすぎる。でも、爪先で触れた知識の端っこが、彼の世界を少しだけ広げてくれる。
この瞬間、子猫はただの好奇心の塊ではなく、小さな探求者になった。
辞書の谷間から顔を上げたその瞳には、次のページへの期待が宿っていた。
この“形而上”って、食べられるのかニャ?

